大 学 入 試 改 革 を 先 取 り、 私 立 最 難 関「 開 成 中 学 」入 試 問 題 が 衝 撃 の 変 貌

「教育虐待」と中学受験業界の闇


中学受験生のみなさん、こんにちは。

東京進学セミナー 講師の新井です。

今日は、昨今話題の 「 教育虐待 」 について見解をまとめました。

なぜ、 「 教育虐待 」が起きてしまうのか。

予防するにはどうすればよいのか。

これは、いち家庭の問題ではなく、受験業界の構造的な問題だと感じています。

「 教育虐待 」 とは何か

「 教育虐待 」 とは何でしょうか。

それは、勉強しない子どもや、勉強していても成果が出ない子どもを、もっと勉強するように、保護者が虐待してしまうことです。

物理的暴力はもちろんのこと、
「 食事を抜く 」 「 課題が終わるまで寝かせない 」 といった日常の行動を制限することも、虐待に当たります。

「 虐待 」 から 「 しつけ 」 へ

では、教育虐待を防ぐにはどうすればいいのか。

一般的によく言われる解決策は、 「 虐待 」 ではなく 「 しつけ 」 を行うこと、と言われています。

保護者が感情に任せて、子どもをコントロールしようとすれば 「 虐待 」 にあたります。

それにたいし 「 しつけ 」 は子どもが自発的に目的に向かって取り組めるよう、保護者が仕組みを作ることです。

つまり、保護者のアンガーマネジメントが重要となってくる、ということです。

この解決策は、一般的な虐待の解決策としては正しいのではないかと思います。

しかし、中学受験となるとどうでしょうか。

少し様相が変わってくるのでは、と感じています。

中学受験業界、闇の教育 ( ダークサイド )

私、新井が受験生として中学受験をしたのは2000年のことで、今から20年前のことです。

その20年前ですら、すでに以下のような逸話を何度も聞かされました。

① 受験生は風呂に入る時間がもったいない。汚れを落とすだけならシャワーで済ませろ。

② 夜中の12時より前に布団に入ることは、うちの塾では許されない。勉強しすぎて死んだやつはいない。睡眠時間は3時間で十分。

③ みなさん、首の後ろをつかんでみましょう。つまめましたか? 実はそこの筋肉は、寝不足になると張ってくるので、うまくつまめないそうです。なのでこの筋肉がつまめた人は、十分過ぎるほど寝ていますので、つまめなくなるまで寝ないで勉強すること!
  
冷静に振り返るとおそろしい人権侵害ですが、20年前の時点では往往にしてこのような指導がまかり通っていたのです。

私は塾講師として絶対にこのような指導はしませんし、万一、当塾の他の講師がこうした指導をしていれば即時に解雇します。

ですが、今でも新人研修として、 「 机の蹴り飛ばし方 」 などが研修項目に入っている塾があると伺っています。悲しいことです。

私は当時、正直に、このような指導を受けたことを親に話しました。

私の親は幸いなことに、そうした雰囲気に飲まれることなく、 ” ただの参考意見として聞き流しなさい ”

とアドバイスをくれたので、私も鵜呑みにすることなく、自分に合った形で受験勉強をすることができました。

しかし、もし、そうした雰囲気に飲まれやすい保護者だったらどうなっていたでしょうか?

親のプレッシャーも半端ない中学受験

話を戻します。

「 教育虐待 」 で報道される家庭は、高校受験・大学受験の家庭よりも、中学受験の家庭がダントツで多いと感じています。

合格実績多数の集団塾では、受験生だけでなく、保護者にもプレッシャーを与えます。

6年の10月なのに統一合判の成績が上がらない、簡単な問題を間違える、自宅でなかなか机に向かわない・・・

他の子はもっと勉強してるのに・・・

そうした焦りの中で、塾の先生からの個人面談での冷静な一言がとどめをさすことになるでしょう。

「 家庭での学習習慣に問題があります。もっとちゃんと課題をやらせてください。 」

やはりそうなのか、帰宅したらもっとうちの子を厳しくやらせなきゃ・・・

●●ちゃんは偏差値72で安定しているというし・・・

うちは5年生から受験勉強をはじめたけど、となりの子は3年生から受験勉強しているから、多少の無理はさせないと・・・

保護者のそうした焦りや、閉塞感にさいなまされた結果が、安易な暴力の使用や、人権侵害レベルでの罰則を与えるという 「 教育虐待 」 へとつながっていくのではないでしょうか。

受験生も限界ですが、それ以上に保護者が限界をむかえていて、心に余裕がない家庭も多いのです。

ちなみに塾講師としてフォローさせていただくと、ご家庭に厳しい言葉を投げかける塾講師の側にも事情があります。

もちろん、受験生の合格を心から祈る講師は多いです。

しかし、何十教室もある大手塾の中には、合格実績によってボーナスが決まったり、逆に校舎の合格者数が少ないと左遷されたりすることもあるので、講師の教育方針に関係なく、受験生にも保護者にも厳しく当たらざるを得ない塾もあります。

事実、そうした業界の風潮に悩み、退職される講師も毎年一定数いますし、私のところにもよく相談が来ます。

受験生や保護者だけでなく、講師の側も引くに引けない事情を抱えているのです。

「 教育虐待 」 をしないためには

いち塾講師の立場から、 「 教育虐待 」 を防ぐために以下の3点を勧めます。

① 中学受験と学校の勉強は大きく異なるものであり、そもそも受験生に無理をさせているものであることを、保護者が深く自覚する。

② その上で、どうしたら受験生の負担が少しでも減らせるか、子どもと一緒に考える

③ 受験生が受験を 「 自分ごと 」 として捉え、勉強する意味が自覚できるようにフォローする

受験生 VS 保護者、保護者 VS 塾、という形になってしまうと、受験生の負担は増えていきます。

良い方法が思いつかない場合、塾の講師にも相談して、より良い受験のあり方を探っていってください。

塾のいいなりになるのではなく、塾や模試をうまく使ってやるんだ、くらいの気持ちの余裕を保護者が持つことが重要です。

当然、保護者の経済力や精神状態が安定していることは中学受験の大前提です。

どちらかが欠けるような状態では受験は成功しませんので、受験断念も視野に入れてください。

中学受験塾がおすすめするようなことではないでしょうが、受験を辞めることは恥ずかしいことではありません。

命に勝る大事なことはありません。

保護者の方の環境が安定しないのであれば、中学受験から潔く撤退して高校受験・大学受験に賭けても良いのではないでしょうか。

さぁ、しっかり対策を行い、
中学受験合格を勝ち取ろう!